デザイナーに必要な資質を改めて教えられた

2019.11.1

ネットを開くと情報が洪水のように流れてきます。
有益な情報もあれば、フェイクニュースや誰かを中傷する言葉もたくさんあります。
それらを見極め、冷静に対処するために、現代人には客観的な視点が必要です。
そして、この客観視できる態度こそ
優秀なデザイナーが本来持っている資質なのではないでしょうか。

レオ・レオーニの日本での展覧会は過去に2回開催されています。
3回目の展覧会がホッチキスに依頼されたのはうれしいことでしたが、
展示作品は過去2回でほぼ網羅されており、
今回『スイミー』の原画が日本で初めてやっては来るものの、
それだけで企画を引っ張っていくのは難しいのではないかと思いました。

レオーニは絵本作家になる前はアートディレクターとして
ニューヨークで活躍していました。
1958年、ブリュッセル万国博覧会のパビリオンの仕事を任されたんですが、
ある理由で閉鎖に追い込まれることになったのです。
レオーニは自国が取り組まなければならない社会問題を写真や絵を使って展示しました。
その中に様々人種の子どもたちが輪になって遊んでいる写真があり、
社会問題を隠すのではなく、明らかにした上で、
目指すべき未来のビジョンを示すという態度を示したものでした。
ところが、政治的圧力により数週間で閉鎖になったのです。
その1年後に『あおくんときいろちゃん』の絵本ができました。
その中にある抽象的な形で表現した子どもたちが遊んでいる場面の構図が
例のパビリオンでの写真とそっくりなのです。




パビリオンに展示された写真




実際の絵本ページ いろとりどりの色たちが遊んでいる


本人から直接証言を取ることはもう叶わないので、
あくまで推測の域を超えられませんが、
レオーニがデザイナーとして社会問題を客観視できていて、
それを絵本というフィクションを通して世の中に訴えかけた。
この『あおくんときいろちゃん』はそういう作品だと言っても差し障りはないと思います。
こんな客観的な視点を持つ絵本作家レオ・レオーニの作品を
読んだつもりになっていても、実はちゃんと読んでなかったんじゃないか。
そんな自戒を込め、もっとたくさんの人に読んで欲しい、
そしてそこから、レオーニが人間や社会に対して考えていたことを読み取って欲しい
と思い、この展示のコンセプトは
「Reading Leo Lionni,again.」としたのです。



メインビジュアル

メインビジュアルは、レオーニの絵本に登場するキャラクターたちが
本を読んでいるというわかりやすいものに。
トラフ設計建築さんにはコロロデスクをたくさん用意してもらい、
来場者に展示作品を見ながら絵本を読んでもらうために会場のあちこちに配置。
もっともっと絵本を読みたくなる仕掛けとして
絵本の世界観を広げるためのデジタルコンテンツを
Plaplaxさんに3種類制作してもらいました。

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